傾いた敵艦の側面に飛び乗り、走り抜ける。
そして見つけた!

 「若様っ!」

割れた窓からぶら下がるカーテンに
しがみついているお子。

 「げきりん…!」

衝撃で散らばるガラスの中
必死で布を握り締めている。

 「若様お手をお離しください!私が受け止めます!」

ガラスの破片が傷つけたのか
頬を赤い筋が伝っている。

 「いや…こわいー!」

その筋に涙の流れが合わさる。

 「必ず受け止めます!そのカーテンも持ちませぬ。お早く!」

つぶっていた目を開き、
こちらを見つめる。

 「げきりん…」

迷いを振り切り、手を離す。

宙に投げ出された御身を受け止めようと手を広げ、

だが、

目の前の空間を貫いた光の束。
高出力ビーム。
その中で きえてしまった。
なにも のこらず。


瞬間何が起きたのか分からず
それを理解した時、全身の血が熱くなり、

その後のことは覚えていない。


§
目を覚ましたのは城の大広間だった。
周りには同じく布団が並び、
傷ついた兵たちが横になっている。

 「お!撃鱗起きたか!」

オレを見付け歩み来る友。

 「すげーじゃねえかお前! まさかお前にあんな力があるとはな」

あんな力?
話がわからず黙っていると、
不思議そうな顔をする。

 「あの戦艦お前が一人で沈めたの、 覚えていないのか?」

オレが一人で?どうやって?
だがすぐにそんなことはどうでもよくなる。
自分はあのお子を…

 「撃鱗頑駄無!ここにいるか?」

廊下から声が聞こえた。

 「ここにおります!」

まだふらつく身体を起こし応える。

 「大将軍様がお呼びだ。謁見の間へ上がれ」

一気に身体が寒くなった。


§
入れと言われ部屋に上がる。
とても顔を上げられず、畳を見つめながらひざまずいた。

 「そなたの働き聞き及んだ。やはりひとかどの者であったな」

意外なお言葉。
しかもその声は明るい。
まだ…ご存じない…?

 「大将軍様…」

ようやく発した声は震えている。
でも申し上げねば。

 「申し開きのしようもございませぬ!
 私は若様を…お守りできませんでした!」

畳に額を擦りつけ、絞り出すように。
どんな処罰でも償えない。
それでも、耐えられぬほどの罰を望んで。

 「撃鱗よ」

なのに上様の口調はあくまでも穏やかだった。

 「ワカがどうかしたのか?ここにおるではないか?」

え?
おっしゃる意味がわからない。

 「面を上げよ。その目で見るのだ」

呪文のようなその言葉に引かれ顔を上げると、

   御簾の前に子どもがいた。

   自分のよく知る

   おなじかたちの

   だが見知らぬ
   若様。


 「あ……う……?」

何故と問おうとして、だが問わずともわかった。
どういうことか。

以前奥方様はおっしゃった。
『二度といなくならない子がほしい』と。
そういうこと。

 「ワカ、この者がお前の教育係の撃鱗頑駄無であったな」

大将軍様の言葉に『若様』はにこりと笑う。

 「そうなのー!」

先の若様より少し舌っ足らずな言葉。

 「さあ、撃鱗と遊んで参れ」

身を固くするオレをちらっと見、
『若様』はぷいとそっぽを向いた。

 「やー!」

そのまま御簾の端にしがみつく。

 「何が嫌なのだ、ワカ?」

大将軍様の問い掛けに『若様』は答えた。

 「だって わすれてないもん。
 わすれてくれなきゃ そっち いかない!」

頭を金棒で叩かれた気がした。

 「…わ…かさま……」

思わず声を出す。

ああ、やはり。

 「わかさまは…」

自分もわかる。

 「若様だけが、若様です」

明るく笑い膝に走り来る。

 「げきたん!」


この方もすべてわかっておられるのだ。

―――


えー…
うちの撃さん城に上がってすぐに
若様のお守り役になってます。
カンの強い赤子若様が唯一懐いたという。

で、ワカ様たくさんいます、城の地下に
大将軍様の…シュミ?
この辺はなんでこーゆうの思いついたのか
24時間でも720時間でも過去の自分を問い詰めたい


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